過大役員報酬の損金不算入のリスクと対策
税務調査の現場では、脱税をしていたわけではないのに、税務署と意見が食い違ったというケースが少なくありません。
実は、このような「見解の相違」が起こる背景には、税法特有の「不確定概念」が存在します。
今回は、税務調査で頻繁に問題となる「役員報酬」を例に、税法における不確定概念について解説します。
不確定概念とは?
税法には、
●不相当に高額
●相当の対価
●通常要する費用
●社会通念上
●やむを得ない事情
など、明確な数字や基準が定められていない表現が数多く存在します。本来、税金は法律によって課されるため、ルールは明確であることが望ましいものです。
しかし、実際の社会では会社ごとに事情が異なります。
そのため、すべてを一律の基準で判断すると、かえって不公平になることもあります。こうした背景から、税法では一定の幅を持たせた規定が設けられているのです。
役員報酬で問題になる不相当に高額
役員報酬は、株主総会などで自由に決定できます。
しかし、同族会社では経営者と株主が一致していることが多く、極端な役員報酬によって会社の利益を個人へ移転することも可能になってしまいます。
そのため法人税法では、職務の対価として不相当に高額な部分については損金算入を認めないとしています。
重要なのは、
「高額だからダメ」ではなく、「職務の対価として不相当な部分だけが問題になる」
という点です。税務署は何を見ているのか?
法人税法施行令第70条では、次の要素を総合的に判断するとされています。
① 役員の職務内容
●責任範囲
●業務内容
●貢献度
●社内外での役割
② 会社の収益状況
●利益水準
●利益率の推移
③ 従業員給与とのバランス
●役員報酬だけが極端に増えていないか
④同業・同規模法人との比較
●類似会社の役員報酬水準
実際の税務調査では、職務内容(①)が最も重視され、 利益や従業員給与との比較(②③)は補足的に使われるケースが多い印象です。
「親族だから高い」は理由にならない
例えば、
●常務取締役:年収1,800万円
●社長の息子である取締役:年収2,400万円
というケース。税務署は、なぜ常務より息子の方が高いのか?という点に着目します。しかし、後継者だから・社長の息子だからという理由だけでは説明になりません。一方で、営業部門を統括している、新規売上に大きく貢献している、実質的にNo.2として経営を担っているといった具体的な説明ができれば、合理性を主張できる可能性があります。
非常勤役員も要注意
月に1回しか出社していない非常勤役員に高額報酬を支給している場合も、税務調査ではよく確認されます。ただし、出勤日数が少ない=直ちに高額ではありません。
例えば、
●元経理責任者として財務面を支援している。
●銀行対応を行っている。
●社員の相談役になっている。
など、会社への関与や経験・知識に価値がある場合には、その内容を説明できることが重要です。
税務調査では、「会社の考え」を伝えることが重要
不確定概念には絶対的な正解がありません。
だからこそ、なぜこの報酬額なのか、会社としてどう考えて決定したのかを説明できることが重要です。税務署が示す金額が唯一の正解とは限りません。会社側も根拠を整理し、自社の考えをしっかり伝えることで、調査段階で円満に解決できるケースも少なくありません。
まとめ
税法には「不相当に高額」「社会通念上」などの不確定概念が数多く存在します。役員報酬についても、単純な金額だけではなく、
職務内容・貢献度・会社の状況・他役員とのバランスなどを総合的に見て判断されます。税務調査で重要なのは、「いくら払ったか」ではなく、「なぜその金額なのか説明できるか」という点です。役員報酬の見直しや税務調査対応についてご不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
参考資料
●法人税法34条 ・法人税法施行令70条 ・会社法330条、361条 ・国税通則法74条の11 ・国税庁 タックスアンサー