経営者が知っておきたい豆知識。 (第25回 種類株式を活用した事業承継・相続対策編)
種類株式を活用した“次世代承継スキーム”とは
近年、オーナー企業における事業承継・相続対策では、「種類株式」を活用した資本戦略が注目されています。従来の単純な株式贈与や自社株評価引下げ策だけでは、後継者への経営権移譲と相続税負担の両立が困難になってきたためです。特に中小企業では、後継者の経営権を確保しつつ、他の相続人との公平性を保つことが求められています。
種類株式とは、会社法108条に基づき、議決権や配当、残余財産分配などの権利内容を通常株式と異なる形で設定できる株式を指します。これにより、経営権と経済的利益を分離し、オーナーの意思に沿った柔軟な承継設計が可能になります。
代表的な設計例
たとえば「議決権のない配当優先株式」と「議決権のある普通株式」を組み合わせることで、後継者には経営権を、親世代や他の家族には配当権を付与できます。後継者が少数株主から経営権を守るための「拒否権付種類株式(黄金株)」を発行するケースもあります。これにより、重要な意思決定(定款変更・合併・解散など)を後継者側でコントロール可能とし、外部からの買収防止にも寄与します。
信託・持株会社との組み合わせ
近年では、種類株式を「家族信託」や「持株会社スキーム」と組み合わせる手法も広がっています。
例えば、親が種類株式を信託し、後継者を受益者に指定することで、経営権を段階的に移譲しながら、親が一定期間コントロールを維持することが可能です。また、持株会社(HD化)を活用すれば、議決権と配当権の設計をグループ全体で整理でき、後継者・非後継者双方の利害調整を容易にします。
導入時の留意点
ただし、種類株式の設計は会社法・税法双方の知識が求められる高度な領域です。発行後の定款変更や、税務上の「実質支配関係」判断を誤ると、相続税・贈与税で不利な評価を受ける可能性もあります。
導入の際は、税理士・司法書士・M&Aアドバイザー等の専門家と連携し、「株主構成」「株式評価」「承継時期」を一体で設計することが重要です。
まとめ
種類株式は、経営権・財産権・感情面の三位一体で進める“新しい承継戦略”の中核ツールです。単なる税負担軽減策ではなく、「次世代が安定して経営を引き継げる体制」をデザインすることこそが真の目的です。自社の将来像を描いたうえで、種類株式をどう位置づけるかが、事業承継成功の分岐点となります。