過大役員退職金の損金不算入とは? 〜税務調査で「過大」と認定された場合の法人・個人の影響と、そうならないための対策〜
今回は、経営者の方なら一度は耳にしたことのある「過大退職給与(役員退職金)」について、税務調査で否認されるリスクと、その防ぎ方をわかりやすく整理してみました。
■ そもそも「過大退職給与」とは?
法人が役員に退職金を支払う場合、その金額が「社会通念上相当」と認められる範囲であれば損金(経費)として認められます。
しかし、不相当に高額だと判断されると、その超過部分は損金不算入=経費として認められません。
これが、いわゆる「過大役員退職金」と呼ばれるものです。
判断のポイントは、次の3つです:
- その役員が法人の業務に従事した期間
- 退職の事情(普通退職か、解任か、死亡退職か等)
- 同業・同規模の他法人での退職金支給水準
つまり単純に「金額が大きい」だけではなく、役員としての功績や退任の事情を踏まえて相当かどうかが判断されます。
■ 税務調査で「過大」と認定されたらどうなる?
法人側の影響
超過部分は損金不算入
→経費として認められないため、法人税が増加します。
追徴税リスク
→延滞税や重加算税などが課される場合もあります。
形式不備のリスク
→支給決議や議事録が整っていない場合、「支給自体が無効」とみなされることも。
個人(受取側)の影響
退職所得として認められない可能性
本来、退職金は退職所得として「1/2課税」+「退職所得控除」の優遇がありますが、否認されると通常の給与所得扱いになってしまい、結果、所得税が大幅に増えます。
■過大認定されないための3つの対策
①役員退職金規程を整備する
退職金の支給基準・算定方法・支給条件を明文化しておくことが重要です。
「取締役会や株主総会での決議があるか」「議事録が残っているか」も税務上の重要ポイントです。
②金額の算定根拠を明確にしておく
実務では、功績倍率法が一般的です。
最終月額報酬× 勤続年数 × 功績倍率(通常は1.0〜3.0倍)
たとえば、月額報酬100万円 × 20年 × 2倍=4,000万円 が基準となります。
③実質的な退任を伴うこと
形式的な退任(名義だけ交代)や、退任後も代表として意思決定している場合は、退職金として認められにくいです。
退任届・役員変更登記・職務分掌の変更など、実質的な退任の証拠を残すことが大切です。
■税務上よくある否認パターン
退任の実態がない(名義上だけの交代)
退職直前に役員報酬を急増させた
同業他社と比べて明らかに高額
議事録・決議などの証拠が整っていない
退職金規程が存在しない
これらは実際の税務調査で指摘されやすいポイントです。
逆に言えば、これらを事前に整備しておけば安心ということですね。
■まとめ
役員退職金は、経営者の長年の功績をねぎらう正当な支給です。
しかし「感謝の気持ちを込めて多めに…」という気持ちだけで決めてしまうと、後から税務調査で否認されるリスクがあります。
支給前に、
✅支給規程・議事録を整える
✅算定根拠を記録しておく
✅ 同業他社との比較を確認する
この3点を押さえておくことで、安心して支給できるようになります。