経営者が知っておきたい豆知識。 (第24回 役員貸付金解消方法編)
中小企業やオーナー企業の経営において、しばしば「役員貸付金」が課題となります。役員貸付金とは、会社が役員へ金銭を貸し付けた際に生じる勘定科目であり、一見すると単なる貸付金ですが、税務調査や金融機関からの信用評価に大きな影響を与えるため、早期に解消することが望まれます。今回は、その背景と解消の代表的な方法を整理します。
■ 役員貸付金が問題視される理由
① 税務リスク
役員貸付金が長期に残ると、実質的には役員賞与等とみなされる可能性があり、追徴課税のリスクが発生します。また利息を付けずに貸し付けている場合、認定利息について指摘されかねません。
② 金融機関からの評価
金融機関は決算書の健全性を重視します。役員貸付金が残高として大きく計上されていると「資金の私的流用」と判断され、融資審査に不利に働くことがあります。
③ ガバナンス上の懸念
会社と役員の線引きが曖昧になると、社内外のステークホルダーに不信感を与える要因になります。
■ 解消の代表的な方法
① 役員からの返済
もっともシンプルな解消法です。役員本人が会社に対して現金を返済することで帳簿上の貸付金は消えます。
ただし、返済原資が個人資産に依存するため、即時の対応が難しい場合があります。
② 役員報酬との相殺
役員に支払う報酬を貸付金返済に充当する方法です。たとえば、役員報酬が月50万円、貸付金が600万円ある場合、報酬を全額相殺すれば1年で解消できます。
注意点として、報酬額を不自然に変動させると税務署から疑義を持たれるため、株主総会や取締役会決議に基づき適正に処理することが重要です。
③ 配当金との相殺
会社が利益を計上している場合、配当金を役員貸付金と相殺或いは配当金支払い後に返済する方法もあります。ただし、配当は株主全員に対して公平に行う必要があり、特定役員だけを対象とした処理はできません。
④ 役員賞与・退職金との相殺
役員賞与や退職慰労金を支給する際に貸付金返済へ充てることも可能です。特に退職金は金額が大きいため、一括解消に有効ですが、損金算入要件(支給基準や合理性)を満たす必要があります。
⑤ 債権放棄
会社が役員貸付金を放棄する方法もあります。ただし、放棄した金額は役員個人に対して課税される可能性が高く、会社側としても損金不算入となる場合があるため、慎重な検討が求められます。
⑥ 自己株式取得による解消
会社が役員から株式を取得し、その対価を貸付金と相殺する方法です。役員側は現金を用意せずに解消でき、会社側は株主構成を整理できるメリットがあります。ただし、会社法上の手続き(総会決議等)や株価の算定が必要となります。
⑥ 生命保険を活用したスキーム
会社が役員を被保険者とする生命保険に加入し、将来の解約返戻金や死亡保険金を役員貸付金の返済原資として活用する方法があります。たとえば、役員退任時に受け取る解約返戻金を原資として役員退職金を支給し、その退職金を役員が会社への貸付金返済に充てることで、実質的な解消が可能となります。
ただし、保険料の損金算入可否や退職金の妥当性など、税務上の取り扱いに注意が必要です。適切に設計すれば「返済資金の確保」と「保障機能」の両立が可能ですが、事前に専門家の検証を行うことが望まれます。
■ 実務上の留意点
① 社内決議の整備
返済や相殺の手続きは、取締役会決議や株主総会の承認を経て、議事録に残すことが必須です。形式を整えることで、税務調査時のリスクを下げられます。
② 返済計画の明確化
金融機関に対しては「いつまでに、どの方法で解消するか」を示すことで、信頼性を高められます。
③ 専門家の関与
税務と会計の解釈は複雑なため、税理士・会計士・保険コンサルタントと連携して最適な方法を選択することが肝要です。
■ まとめ
役員貸付金は「放置すれば税務リスク・信用リスクにつながる」一方で、返済や相殺、生命保険の活用など多様なスキームで解消が可能です。
当社のようなコンサルティング会社では、経営者様の資金状況や会社の利益計画を踏まえ、返済スキームの設計から税務・金融機関対応まで伴走支援を行っています。
役員貸付金の解消は「単なる経理処理」ではなく、会社の信頼性を高める経営判断そのものです。早めの着手をおすすめいたします。