経営者が知っておきたい豆知識。 (第31回 相続対策の落とし穴【第1編】)
■ 相続対策の落とし穴【第1編】
〜不動産投資による相続対策、本当に安全ですか?〜
相続対策として最も多く利用されている方法の一つが、不動産投資です。
特に「現金を不動産に変えると相続税評価額が下がる」といった話は広く知られており、実際に一定の節税効果が生じるケースもあります。
しかし、不動産を活用した相続対策は、設計を誤ると逆に大きなリスクを抱えることがあります。
例えば、賃貸マンションを建築した場合、土地は貸家建付地評価、建物は固定資産税評価となるため、一般的には現金より相続税評価額が下がります。そのため、「相続税対策になる」という説明がされることが多くありますが、近年は税務署も「過度な節税目的」の案件について厳しく見ています。
特に有名なのが、いわゆる“タワマン節税”に関連する最高裁令和4年4月19日判決です。この判決では、不動産評価について財産評価基本通達どおりに計算したとしても、著しく実態とかけ離れている場合には、国税当局が別評価を行うことを認めました。
さらに2024年(令和6年)からは、居住用マンションの相続税評価額の計算ルール自体が厳格化され、以前のような大きな評価減ができなくなっています。つまり、「評価額が下がるから安全」という時代ではなくなっているということです。
また、不動産は相続税評価額が下がる一方で、実際には現金化しにくいという問題があります。
相続税は原則として現金納付であるため、相続人が納税資金を準備できず、不動産売却を迫られるケースも少なくありません。さらに、不動産は分割しにくい財産でもあります。
例えば、長男は不動産を取得、次男は現金を希望といったケースでは、不公平感が生じやすく、相続トラブルの原因になります。
特に収益不動産の場合、誰が管理するのか?修繕費はどうするのか?空室リスクを誰が負担するのか?といった問題も発生します。また、「借入を利用すれば相続税が下がる」という話だけが先行し、キャッシュフローを十分に検討しないまま投資を進めるケースも見受けられます。
しかし、金利上昇や空室率悪化によって、想定していた収益が出なくなることもあります。実際には、節税には成功したが、しかし収支が悪化し結果として家族が困ったというケースも珍しくありません。
不動産による相続対策は、単なる“評価引下げ”ではなく、収益性・換金性・分割のしやすさ・将来の管理負担まで含めて検討する必要があります。
■ まとめ
不動産は有効な相続対策となる一方で、税務否認リスク・納税資金不足・相続人間の争い・収益悪化といった落とし穴も存在します。
「評価額が下がるから安心」ではなく、相続後まで見据えた設計になっているかを確認することが重要です。
■ 免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の税務・法律・投資に関する断定的な判断やアドバイスを行うものではありません。実際の税務申告や投資判断におかれましては、個別の状況に応じて税理士などの専門家にご相談の上、ご自身の責任においてご判断ください。