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経営者が知っておきたい豆知識。 (第22回 決算書から考える法人保険必要保障額編)

 〜 PLBSと事業承継リスクの視点から 〜

法人保険を検討する際の最大の論点は「必要保障額をいくらにするか」です。感覚や営業提案だけで決めてしまえば保険料が過大になったり、逆に不足して肝心なときに資金が足りなくなるリスクもあります。その判断材料となるのが 決算書(PL・BS) です。さらに中小企業にとっては「事業承継」も大きな資金需要となります。本記事では売上20億円・売上総利益率:65%、営業利益率8%、負債(借入金5億円)・退職金1億円・現預金残高3億円という想定モデル企業を例に必要保障額を算定します。

1 .BS(貸借対照表)の視点

貸借対照表は会社の財産状態を示します。法人保険を設計する上では次の項目を中心に考えます。

・借入金残高:5億円
経営者急逝時には金融機関からの返済請求が一気に押し寄せる可能性が高く、最優先で保障対象に含めるべきです。

・役員退職給与引当金:1億円
死亡退職金として遺族へ支払われる資金。相続財産としても扱われるため、承継や納税準備の意味も含みます。

・現預金残高:3億円
内部留保が一定水準あり、借入金や運転資金の一部をカバーできます。ただし承継コストを考慮すると「余裕」とは言い切れません。

 

  .PL(損益計算書)の視点

損益計算書は収益力と費用構造を示します。保障額算定では以下の観点が重要です。

・売上20億円・営業利益率8営業利益1.6億円
高収益で保険料負担力も十分。ただし経営者不在による売上減少リスクは常に考慮する必要があります。

・変動費の把握(原価等)
原価率を35%で試算した場合、月額約5,833万円とすると、最低3ヶ月分=(約) 17,500万円 を確保する必要があります。これが事業継続の最低ラインです。

・固定費の把握
給与・地代家賃・光熱費などの固定費が月9,500万円とすると、最低3ヶ月分=(約) 28,500万円 を確保する必要があります。これが事業継続の最低ラインです。

 

.事業承継リスクの視点

中小企業で忘れてはならないのが「事業承継時の株式評価と納税資金」です。

・株式評価と納税資金
仮に純資産が10億円、自社株評価額が大きくなると、相続税で数億円の納税資金が必要になるケースがあります。保険は「後継者納税資金準備」「株式買い取り資金」の原資として活用可能です。

・後継者資金の確保
後継者が事業を引き継ぐ際に株式を買い取る必要がある場合、数億円規模の資金が求められます。この原資を法人保険で準備することで、後継者への負担を軽減できます。

 

.必要保障額の試算

ここまでの要素を踏まえると、試算は以下のようになります。

・借入金残(BS):5億円

・役員退職慰労金:1億円

・運転資金(PL):変動原価(5,833万円)+ 固定販管費(9,500万円)×3ヶ月 ≒ (約)46千万

・現預金残高(BS):▲ 3億円

・事業承継コスト(自社株式買取り等):仮に2億円

合計必要保障額 = 5 + 1 + 4.6 − 3 + 2億  =  9.6億円

したがって、このモデル企業においては、事業承継リスクを考慮すると必要保障額は 9.6億円 となります。

※ただし、後継者による事業承継の成立を前提とした場合、借入金については継続的な返済が可能であると想定し、借入金を除いたうえで以下のとおり計算します。

合計必要保障額 = 1 + 4.6 − 3 + 2億  =  4.6億円

 

.まとめ

法人保険は節税や積立だけが目的ではなく、企業の存続と承継のための「安全装置」です。

BSの視点:借入金・その他負債・現預金

PLの視点:変動原価・販管費等の固定費・利益率・運転資金ニーズ

・事業承継の視点:相続税・株式買い取り・納税資金

今回のモデルでは、借入金5億円・退職金1億円・現預金3億円に加え、承継資金2億円を考慮することで、必要保障額は9.6億円と算出されました。

感覚ではなく決算書と承継シナリオに基づき保障額を設定することで、法人保険は単なる支出ではなく、経営の継続性を守る実効性あるツールとなるのです。

 

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